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2021年07月15日

エイジングケア

便利な生活で失われるもの

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急激に変化する現代生活

現代の生活は、車や電車などの交通機関や、インターネット、ロボット、AIなどの発達で、大変便利になりました。その反面、人々は体を動かすことがどんどん少なくなっています。

約30,000年前のクロマニヨン人から、今日までの長い人類の歴史のうち、99.99%以上は「歩く・走る」ことが行動の中心でした。

例えば、私たちの先祖は、食料を確保するため、歩き、走っていました。私たちの遺伝子もそのようになっています。現代の生活は、人類史上、急激に変化しているのです。

最近のデータにも、変化が顕著に表れています。国民健康・栄養調査によると、成人の1日当たりの歩数平均値は、1991年では男性8333歩、女性7130歩であったのに対し、2017年では、順に6846歩、5867歩となり、男性では約1500歩、女性では約1200歩も減少しているのです。

このまま身体活動の減少が進むと、どんな影響があるのでしょうか。

 

便利な生活の代償

「テレビ、自動車、パソコンを持っていると糖尿病と肥満が増える」という研究結果(*)があります。これは国際的な研究チームが、世界の17ヵ国の合計107,599件の家庭と、153,996人の成人を対象に調査したものです。

先進国では、テレビ、自動車、パソコンの3つを所有している人が大部分ですが、所得の少ない途上国ではまだ普及していない地域が多くあります。

しかし、その途上国において、この3つを所有している人は、所有していない人に対して、糖尿病(2型)で2.5倍、肥満で3倍、それぞれ発症率が上昇することが判明したのです。

糖尿病(2型)や肥満は、米国や日本などの先進国だけでなく、低・中間所得の国でも急速に増加しています。特に工業化が著しく所得が増えている地域で、爆発的に増えています。

家事は自動化され、通勤は車で済ませ、仕事中は座ったまま…。大変便利で豊かな生活だと思いますが、一方で人々の身体活動の量は低下し、運動不足に陥っています。そしてそれが、病気につながりかねないのです。

総務省の社会生活基本調査(2016年)によれば、日本人がスポーツにかける時間は、1日に平均14分しかないそうです。

一方、テレビ・ラジオなどの視聴や、雑誌・新聞などの閲覧にかける時間は平均135分なので、体を動かさずに座っている時間がそれだけ多く、健康を害するリスクが高いということです。

あなたの状況はいかがでしょうか?人類の歴史を振り返って、世の中の便利さにとっぷり浸かることなく、歩く・走るをベースに忘れず運動を行いましょう!

また、便利な生活には、その代わりに失われるものもあることを知りましょう。

*CMAJ March 04,2014 186(4)258-266

 


 

コラム筆者:元井益郎

薬学博士/薬剤師/NR・サプリメントアドバイザー(日本臨床栄養協会)/日本抗加齢医学会指導士(日本抗加齢医学会)/毛髪診断士(日本毛髪科学協会)

東京薬科大学薬学部卒業。ジェーピーエス製薬株式会社入社・退社後、サンプライズ株式会社設立。東京大学や慶應義塾大学など、国内の著名な大学機関と抗加齢に関する共同研究を行い、研究結果をもとにサンプライズ製品の開発を行う。

趣味は山登りとマラソン。74歳になるが、自称年齢は50歳。2017年6月、デナリ(マッキンリー)に登頂成功。好きな言葉は、「過去は変えられないが、未来は変えられる」。

著書に『医師と薬に頼らないがん治療』(大学教育出版)、『49歳からの「若返る」教科書』(新評論)がある。

元井 益郎

薬学博士/社長

1分も走れないペンギン歩きから、世界7大陸最高峰を目指す70代に。

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