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2017年04月10日

ヘアケア

育毛・美髪物質「IGF-1」を増やす方法

前回は、IGF-1(インスリン様成長因子-1)という体内物質に、私たち人間の心身の成長だけでなく、髪を増やして綺麗にする作用、さらに肌の老化を抑える、免疫力を上げる、生活習慣病を予防するなどの作用があることをお伝えしました。

アンチエイジング効果と健康効果を持つIGF-1。これを安全に体内で増やす方法があれば、誰しも是非やってみたいと思うでしょう。どんな方法があるのでしょうか。

 

成長ホルモンやIGF-1の直接投与では、副作用が起きる。

思春期には、成長ホルモンが分泌され、このホルモンが体中でIGF-1を増やすことで、心身を成長させます。そこで、大人へ強制的に成長ホルモンを投与すれば、IGF-1を増やして、アンチエイジングができるのではないかという試みが行われました。

しかし、大人になってから成長ホルモンを投与した場合は、アンチエイジング効果は低く、筋肉痛、関節痛、糖尿病の発症など、副作用が起こることが分かりました。IGF-1を直接注射しても、同じような副作用が起きることもわかっています。

このように、大人になってから強制的に成長ホルモンやIGF-1そのものを投与することは、伸びしろのない筋肉や骨を肥大させて痛みを引き起こします。それに加えて、成長ホルモンを投与した場合は、糖代謝にも悪影響を及ぼしてしまいます。

それでは他に、安全にIGF-1を増やして、育毛や美肌などのアンチエイジングを実現する方法はないのでしょうか?

 

知覚神経を刺激すると、安全にIGF-1が増加する。

実は筆者は、はじめは育毛の研究については全くやっておりませんでした。もともと血液内科を専門としており、血液中の血栓症を防ぐ、ある物質の働きについて研究をしていました。

その研究のなかで、血栓症を防ぐ物質が、痛みや熱さを感じる知覚神経を刺激し、IGF-1を増やすということを偶然に見つけたのです。

そして、知覚神経を刺激する代表的な物質、カプサイシン(唐辛子の辛味成分)がIGF-1を増やすことも発見。さらに、カプサイシンと一緒にイソフラボン(大豆に含まれる)を投与すると、IGF-1がより一層増えることも見出したのです。

 

カプサイシンとイソフラボンの摂取で、脱毛症が改善!

カプサイシンとイソフラボンを摂取してもらうと、IGF-1が増える。このことが動物実験で確認できたので、次に、実際に脱毛症の人でもIGF-1が増えて、育毛効果が表れるかどうかを検討してみました。

まず、皮膚科での治療が効かなかった重症の円形脱毛症の、ある男性にカプサイシンとイソフラボンを摂取してもらいました。すると、何と、カプサイシンとイソフラボンの摂取後、3週間目から産毛が生え始め、その後も毛が増え続けて脱毛症が改善したのです。

さらに、この育毛効果を確認するために、いろいろなタイプの脱毛症の方々31人に、5ヵ月間カプサイシンとイソフラボンを摂取してもらいました。その結果、そのうち20人に育毛効果が見られ、血液中のIGF-1濃度も上昇していることが判明しました。

このように、カプサイシンとイソフラボンを摂取すると、胃の知覚神経が刺激され、その刺激が脳を経て全身に伝わり(頭皮を含む)、IGF-1が増えます。この結果として、育毛効果が表れてきます。

IGF-1には、育毛効果だけでなく、毛髪の質を良くする効果もあるので、カプサイシンとイソフラボンを摂取すると、育毛効果以外にも、髪の毛が太くなり、コシが出てきて、ツヤも良くなるなどの効果が表れます。

 

カプサイシンとイソフラボンで、高血圧・片頭痛・うつ症状も改善

IGF-1には、育毛作用以外に、高血圧や糖尿病などの生活習慣病の改善効果や、うつ症状、認知機能などの改善効果もあります。カプサイシンとイソフラボンの摂取でも同じ効果を期待できます。

例えば、IGF-1には、心臓の働きを活発にし、血管を開いて全身の血流を増やす、血管拡張効果があります。そのため、カプサイシンとイソフラボンを摂取してもらった脱毛症の方の中でも、高血圧だった方々は、摂取5カ月後に高血圧が改善しました。(血圧が正常であった方々に、血圧の変化は見られませんでした。)

また、頭の血管が一時的に縮み、その後に拡張するときに、ズキンズキンと痛みがでる片頭痛も、カプサイシンとイソフラボンの摂取で改善します。これは、IGF-1により、頭の血管の一時的な縮みが抑えられるためと考えられます。

さらにIGF-1は、脳の中で、記憶の中枢である海馬という組織の活性化を促す作用もあります。これにより、認知機能やうつ症状が改善されることが知られていますが、実際に、カプサイシンとイソフラボンの摂取でも、うつ症状の改善が認められました。

 

知覚神経を刺激する食品成分で、育毛もアンチエイジングも叶えよう。

IGF-1研究を続けるうちに、カプサイシンとイソフラボン以外の食品成分でも、古くから健康に良いとされてきた食品の多くが、知覚神経を刺激してIGF-1を増やし、健康効果を発揮していることが分かりました。

ただし、IGF-1は体内で貯蓄することができませんので、毎日摂取することが大切です。育毛だけでなく、幅広いアンチエイジング効果、健康効果がありますので、毎日の食生活に取りいれると良いでしょう。

次回は、IGF-1を増やす食品についてご紹介したいと思います。

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

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