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2020年07月02日

ヘアケア

血流が増えれば毛が生える?血流と育毛の本当の関係

頭皮の血流が増えるだけでは、髪の毛は生えてこない!

新聞などに掲載されている市販の育毛剤のコマーシャルには、頭皮の血流増加が、育毛を促進するという風に書かれていることがあります。

しかし、これは間違いです。血流が増えると、髪への酸素と栄養分の供給が増え、いかにも育毛が促進されるであろうと考えやすいのですが、そうではありません。

正解は、育毛が促進される状態になると、毛根の状態がまず良くなり、それに伴い、毛根を養うのに見合うだけの血流が増えるということです。血流だけを増やしても、育毛は促進されないのです。

 

育毛と血流の関係は?

インスリン様成長因子-1(IGF-1)を体内で作れない患者さんは、薄毛になることから、IGF-1は育毛に不可欠であると考えられます。

毛根でIGF-1が増えると、毛母細胞の分裂が活発になり、育毛効果が表れますが、その時、頭皮の血流はどのように変化するのでしょうか?

 

知覚神経の刺激は、育毛物質IGF-1を増やし、その結果、頭皮の血流も増やす

頭皮の毛細血管の周辺には、痛みやかゆみ、熱さを感じる知覚神経が分布しています。

カプサイシンなどの知覚神経を刺激する食品を摂ると、毛細血管でカルシトニン遺伝子関連ペプチド(CGRP)という物質が放出されます。

CGRPは、プロスタグランジン(PGs)という物質を増やしますが、PGsもまた、知覚神経を刺激する作用を持っているので、さらにCGRPの放出を増やします。

大量に作られたCGRPは、毛根に作用して、IGF-1を作らせます。IGF-1は、髪の毛の元になる毛母細胞を増やして、育毛効果を発揮するのです。

この一連の過程で作られるPGsは、毛細血管を強く拡張させる作用があるので、頭皮の血流も増やします。

すなわち、IGF-1が増えることで、育毛効果が発揮されると同時に、血流も増えるのです。これが、毛根で髪の毛が作られるのに必要な、酸素やアミノ酸などの栄養分の供給増に繋がります。

このように、血流が増えるから毛が生えるのではなく、IGF-1が増えて毛が生えてくるから、血流も同時に増えているということになります。血流だけを増やしても毛は生えません。

 

風邪薬(解熱鎮痛剤)で、PGsを減らすと頭皮の血流も減少する

前述のように、IGF-1が増加する過程では、毛細血管で作られるPGsという物質が重要なのですが、PGsは、発熱や痛みを発現させるという一面もあります。

市販の風邪薬等に含まれる解熱鎮痛成分は、このPGsの産生を抑制することで、解熱鎮痛効果を発揮しますが、同時に、IGF-1の産生を阻害します。

このために、解熱鎮痛剤は脱毛を引き起こすことがあります(アセトアミノフェン以外)。この脱毛させる風邪薬で、PGsを抑制すると、頭皮の血流も減るかどうかを試してみました。

現在、名古屋Kクリニックで、脱毛症治療に使用しているサプリメントには、タキシフォリン(TAX)という物質が含まれています。TAXも、IGF-1を増やすので、育毛効果を発揮し、頭皮の血流も増やします。

IGF-1を増やすTAXで、頭皮の血流が増えるかどうか、またPGsを抑制する風邪薬で、実際に血流増加が阻害されるかどうかを、数名の女性の方たちの協力で、検証しました。

下の写真は、TAX服用前と服用30分後の頭皮の血流変化を示しています。TAXの服用で、確かに頭皮の血流が増えていることが分かります。

ところがTAXを服用する30分前に、風邪薬を服用しておくと、それだけで頭皮の血流が低下していて、TAX服用30分後でも、血流が増えていないことが分かります。

▼写真1:タキシフォリン(TAX)摂取による頭皮の血流増加。左からTAX摂取前、 TAX摂取30分後。

▼写真2:風邪薬服用の頭皮血流への影響。左からTAX摂取前、 TAX摂取30分後。

これらの事実は、知覚神経を刺激すると、毛細血管でのPGsの産生が増えて、結果としてIGF-1が増え、それにより血流増加が起こることを示しています。

繰り返しますが、頭皮の血流が増えるだけでは、育毛効果は表れません。育毛も頭皮血流の増加も、IGF-1が増えるために起こる現象です。

風邪薬や花粉症の薬は、IGF-1産生も、それに引き続く血流増加をも阻害して、脱毛を引き起こすのです。

頭皮マッサージも、直接血流を増やすのではなく、知覚神経を刺激した結果、血流が増えています。頭皮を温めると血流が増えますが、これも、 温めることで知覚神経が刺激されやすくなり、IGF-1が増えた結果、血流が増えるのです。

 

頭皮の血流だけを増やすと、逆に、脱毛する!

降圧剤の中には、毛細血管を直接拡張させる薬があります。この薬は、血圧を下げる作用が早く発現するので、日本では、多くの開業医が好んで使います。

しかしこの薬では、脱毛が起きます。理由をご説明します。

私たちの体には、毛細血管の血流が悪くなると、知覚神経を敏感にさせてCGRPの放出を増やし、IGF-1を増やして血流も増やすという働きが備わっています。

しかし、毛細血管を拡張させる降圧剤は、その元々備わっている回復力(知覚神経を敏感にする)を阻害してしまうために、IGF-1が増えなくなり、脱毛が起きるのです。

頭皮の血流増加=育毛ではなく、IGF-1増加=育毛=血流増加なのです。やみくもに血流の増加だけを目指すと、育毛とは程遠い結果をもたらすことがあるので、注意しましょう。

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

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