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2019年08月08日

ヘアケア

秋に一年で一番抜け毛が多いのは、本当?

夏の終わりに必ず出てくる、あのCM

夏が終わりに近づくと、テレビや新聞で「紫外線で傷んだ毛のお手入れの季節です。秋口の抜け毛を予防するAシャンプーやBヘアートリートメント」などの広告が見られるようになります。

前回述べたように、紫外線をよほど大量に浴びない限り、毛髪は傷んだりしません。むしろ適度の紫外線を浴びた方が、髪の毛はきれいになるでしょう。

しかし、化粧品会社やシャンプーメーカーは、どうしても夏の紫外線で髪の毛がダメージを受け、秋口に毛が抜けるという、まことしやかなウソのストーリーを作り上げ、コマーシャルトークに使い、シャンプーやヘアートリートメントの売り上げを増やそうとします。

秋口に抜け毛が増える、というデータは本当にあるのでしょうか?この作り上げられたストーリーを、多くの人たちが疑いもなく信じ込んでいるようです。

 

一年のうち、最も抜け毛が増える季節は、ではなく初夏だった!

図1は、書籍『白髪・脱毛・育毛の実際』(2005年 NTS出版)から抜粋したもので、男性型脱毛症の方の毎月の抜け毛本数を、2年間に渡り数えた結果です。このデータからわかることは、秋に抜け毛は増えておらず、むしろその前の初夏の頃に増えているということです。

▼図1: 洗髪抜毛法の1例 抜け毛本数の年間変動(58歳O型)

写真1を見て下さい。名古屋Kクリニックで治療中の、男性型脱毛症の方の頭部写真です。この方は、2012年9月から治療を開始して、2013年4月には改善していることがわかります。

▼写真1:41歳男性/男性型脱毛症

同じ治療を続けているにも関わらず、2013年5月には地肌が目立っています。しかし、その1ヵ月後には再び改善しています。2014年4月には、治療を続けているので、1年前と比べてさらに改善していることがわかります。しかし2014年5月には、また地肌が目立っています。そしてその1ヵ月後には、また改善しています。

これは、毎年初夏になると、毛が細くなり地肌が目立ってきて、その季節を過ぎると、また毛が太くなって地肌が隠れてくることを意味しています。

このように、毛が細くなり抜け毛が最も増えるのは、実は秋口ではなく、初夏なのです。

 

なぜ、初夏に抜け毛が増えるのか?

人間の体は、環境の変化に適応するために、自律神経系をうまく働かせています。ご存じのように、自律神経系は、交感神経系と副交感神経系からなりますが、正常な場合、昼間は交感神経系が、夜間は副交感神経系が活性化します。また、昼夜に関わらず、生体にストレス(大きな環境の変化など)が加わると、交感神経が活性化されます。

初夏は寒暖の差が大きく、朝晩は10℃台の気温ですが、昼間は20℃台後半まで上がることも多くなります。この寒暖の大きな差がストレスとなり、自律神経のリズムが乱れ、交感神経優位の状態(自律神経失調)になってきます。5月病という、少し気分が滅入る病気がありますが、これも同様のしくみで起こる、自律神経失調の結果、起こってきます。

以前述べたように、知覚神経を刺激して、全身でIGF-1が増加する際には、副交感神経の働きが重要です。そのため交感神経優位の状態では、IGF-1が増えにくくなり、結果として、抜け毛が増えたり毛が細くなったりすると考えられます。

IGF-1には抗うつ効果もあるので、5月病では、IGF-1が低下するために、軽度のうつ症状が現れるのでしょう。

 

初夏の抜け毛に対する対策は

初夏の抜け毛を防ぐ方法は、知覚神経を刺激して、IGF-1を増やすしかありません。

図1の男性型脱毛症の方の場合、初夏には抜け毛が増えていましたが、写真1の男性型脱毛症の方では、初夏に頭頂部の地肌は目立っているものの、その1ヵ月後には改善しています。これは、毛が抜けて地肌が目立ったのではなく、毛が細くなって地肌が目立って、その後、また毛が太くなってきて地肌が隠れているためと考えられます。

この方は、名古屋Kクリニックで、カプサイシンなどのサプリメントとアボルブという薬を服用して、 IGF-1を増やす治療を受けていますが、図1の男性型脱毛症の方は、IGF-1を増やす治療を受けていません。

したがって、IGF-1を増やす治療を受けていれば、初夏の寒暖差ストレスによっても、毛は抜けず、一過性に細くなるだけで済むのです。一般に、寒暖差によるストレスに限らず、他の原因によるストレスから髪の毛を守る場合にも、同じことが言えるでしょう。

 

初夏に限らず、寒暖の大きな差を作らない

初夏の外気の寒暖差以外にも、夏の強い冷房による室内と外気の気温差も、ストレスとなります。

もちろん、熱中症予防のための、適度な冷房の使用は必要です。しかし室内の温度が下がり過ぎて、何か羽織らなければならない状態では、外気との大きな気温差が体にとってストレスとなり、初夏と同じように自律神経失調を起こします。これが、いわゆる冷房病というものです。

もちろん、このような場合にも、抜け毛が増えることになりかねませんので、注意が必要です。

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

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