MENU

2019年07月04日

ヘアケア

科学的に知ろう!夏のヘアケア

夏は化粧品メーカーの稼ぎ時。でも、そのコマーシャルトーク、鵜呑みにしないで!

夏が近づくと、危険な紫外線からあなたの肌を守るという化粧品、また紫外線で髪が傷つくのを防ぐというシャンプーやトリートメントなどのCMが、テレビから溢れるように流れてきます。確かに紫外線は、エネルギーの高い光であるため、細胞のDNAを傷害したり、活性酸素の発生で、たんぱく質を変性させたりします。

しかし、私たちの体は、これを防御し修復する力を持っています。肌や髪の毛に対する、紫外線の悪い作用のみを強調する化粧品やトリートメントのコマーシャルを、鵜呑みにしてはいけません。

 

紫外線とは?

紫外線は、可視光線で最も波長の短い紫色の光よりも、さらに波長が短い光なので、このような名前がついています。

紫外線の中には、比較的波長の長い紫外線A(UVA)と、それよりも波長の短い紫外線B(UVB)があり、地上に到達する紫外線は、ほとんどがUVAです。UVAは、皮膚の深部にまで届き、メラニン色素の産生を高め、肌のシワやたるみの原因になると考えられています。またUVBは、皮膚の表面で吸収され、長時間皮膚に作用すると、そこで発赤や水泡などの日焼けを引き起こし、シミやそばかすの原因になります。

しかし一方で、紫外線はビタミンDを活性化する作用を持っており、体にとって悪いことばかりをしているわけではありません。

 

紫外線に対する防御機構とは?

上述のように、紫外線は細胞のDNAを傷害しますが、それに対する防御機構の存在について、ご説明します。紫外線が皮膚に当たると、皮膚の細胞はメラニン色素を作ります。作られたメラニン色素は、DNAが存在する細胞の核の上に局在します。これがちょうど紫外線に対する庇(ひさし)のように分布して、DNAを傷害から守ります。

しかしこれ以外にも、紫外線から私たちの体を守る機構が存在します。その機構は、私たちの体が紫外線を受けると、育毛効果や美肌効果を持つ、インスリン様成長因子-1(IGF-1)を増やすことができるというものです。

 

紫外線は、IGF-1を増やす!

これまで述べたように、 IGF-1は、育毛、そして毛の質も改善させる効果、さらに美肌効果をも持っています。紫外線は、髪の毛のたんぱく質を変性させたり、皮膚にシワやメラニン色素を増やして、シミやくすみを作ったりしますが、IGF-1が増えれば、その変化は防がれることになります。それでは、どのようなしくみで、紫外線はIGF-1を増やすのでしょうか?

 

紫外線は、知覚神経を刺激してIGF-1を増やす!

皮膚の知覚神経には、クリプトクロムというたんぱく質があり、青色光やUVAによって活性化されてIGF-1を増やします。

また紫外線は、体内のビタミンDを活性化する作用があるとお話しましたが、それはUVBの成分によって引き起こされます。そしてその活性化されたビタミンDが、知覚神経を刺激してIGF-1を増やすことも、私の研究でわかりました。

すなわち、UVAとUVBは、直接的に、また間接的に知覚神経を刺激して、 IGF-1を増やすことになります。

化粧品会社のCMは、紫外線の悪い面ばかりを強調していますが、ビタミンDの活性化を含め、IGF-1を増やすという良い面もあるのです。必ずしも悪い面ばかりではありません。むしろ、適量の紫外線を浴びる方が、育毛にとっては良いことなのです。

 

青色光照射は、育毛効果を発揮する!

写真1をご覧ください。30代の男性型脱毛症の患者さんの頭部です。IGF-1を増やすサプリメントや薬で治療して、徐々に脱毛症は改善していますが、青色光照射を行った後は、それまでの治療と比べて、明らかな改善が見られます。

▼写真1:30代男性/男性型脱毛症。左から治療前、治療1年4ヶ月後、治療1年6ヶ月後、青色光照射6回後の治療1年7ヶ月後。

また、1日10分間、14日間に渡り、13名の女性の顔に青色光を照射した結果、7割近くの人に弾力性の増加が認められました。IGF-1は、肌の弾力性を上げる以外にも美肌効果を持っており、IGF-1を増やすサプリメントを飲むと、シミやくすみが改善します。

このように、皮膚の知覚神経のクリプトクロムを青色光で刺激すると、育毛・美肌効果が見られます。適量の紫外線も同様のしくみで、これらの効果をもたらすと考えられます。

 

適量の紫外線を浴びる生活とは?

適量の紫外線は、髪の毛や肌、そして健康にも良いのですが、それを浴びるためには、どのような生活習慣を取り入れれば良いのでしょうか?

活性型ビタミンDの生成量から考えると、春から夏の紫外線が強い時期では、午前中に1日30分くらい、また秋から冬にかけての紫外線が弱い時期では、その7~8倍の時間、浴びることが必要です。

直射日光でなくても、屋外の木陰や屋根の下でも紫外線は浴びられます。皮膚がんの発症も、白人と違い、夏場に毎日長時間浴びない限りは、日本人ではあまり心配する必要はありません。

 

化粧品会社のセールストークなどは聞き流して、紫外線を適量浴びることが育毛・美肌には重要!

よく、化粧品会社のCMを真に受けて、紫外線を異常に怖がり、外出時に帽子やサングラス、日焼け止め、手袋、長そでなどの完全防備で生活する人を見かけますが、このような習慣は、育毛・美肌、そして健康面から考えると、マイナス面の方が多いでしょう。

紫外線は、すべての生命を誕生させ、そして維持している太陽光の一つの成分です。悪い面ばかりを持っているわけではありません。上述のように、適量の紫外線を浴びて、髪の毛、肌、そして健康を守りましょう。

 

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

\ この記事をシェア /

pagetop