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2019年05月31日

ヘアケア

ツルツルになっても、毛穴から毛は生えるの?

毛穴がなくなると、毛は生えてこない?

名古屋Kクリニックの患者さんから、「鏡を見ると頭に毛穴が見えないが、もう毛は生えてこないのでしょうか」という質問をよく受けることがあります。答えはNOです。頭皮に毛穴がない(見えない)状態でも、治療によりインスリン様成長因子-1(IGF-1)が毛根で増えると、毛穴を作る細胞や、毛根の髪の毛の元になる毛母細胞が増えて、毛穴が再生し、毛が生えてきます。

ただし、頭部の怪我で、頭皮が深く失われ、その後に正常な皮膚が再生できず、いわゆる瘢痕組織になると、毛は生えてきません。この部分では、毛根でIGF-1を作る細胞がなくなるので、毛穴も髪の毛もできないのです。

脱毛症は、このような観点では、怪我の後の組織に毛が生えてこない瘢痕性脱毛と、そうでない非瘢痕性脱毛に分けて考えられます。男性型脱毛症や女性型脱毛症、円形脱毛症などは後者に含まれ、現在の脱毛症治療の対象になりますが、前者では現在のどんな治療をしても毛は生えてきません。

しかし将来、幹細胞移植などができるようになれば、瘢痕の部分でも、移植した幹細胞からIGF-1が作られ、毛が生えてくることが期待されます。

 

毛穴は、どのように再生するか?

髪の毛がその寿命を終えて抜け落ちると、毛穴は閉じます。しかしこの時、頭皮の深いところでは、毛を作る装置である毛乳頭という組織がお休みしている状態にあるのです。

脱毛症でない人は、毛乳頭がまもなく目覚め、毛と毛穴を再生させ、毛が生えてきます。しかし脱毛症の人は、毛乳頭のお休み期間が長く、毛穴が見えない状態が長く続くのです。薄毛の人は、このような毛の生えてこない状態が長く続くため、「毛穴がないと毛が生えてこない」と考えてしまうのでしょう。

頭皮の表面を見ると、毛穴があるかどうか確認できます。そして毛が生える前には、開いて黒くなってくる毛穴が観察され、生き返り再生する様子が分かります。

 

毛穴がなかった頭皮に、毛が生える過程

写真1は、全身の毛が抜ける汎発性脱毛の患者さんの頭皮です。汎発性脱毛は、円形脱毛症の最重症型で、最近では芸能人のピッピさんが罹患していることを公表し、知られるようになりました。自分のリンパ球が毛根を攻撃して脱毛する病気(自己免疫疾患)です。現在の皮膚科治療では治りませんし、IGF-1 を増やす治療を施行しても、完治するまでに3~5年はかかる重症の脱毛症です。

▼写真1:30代女性/汎発性脱毛。左から治療前、治療3ヶ月後。

この脱毛症の頭皮は、毛穴が再生し毛が生えてくる過程が観察しやすいので、写真をお示しします。この患者さんに、カプサイシンなどのサプリメントとセファランチンという薬でIGF-1を増やす治療を行うと、治療前には目立たなかった毛穴が、治療1ヵ月後には黒く目立ってきていることが分かります。

これが毛穴の再生の第一歩で、頭皮の深いところで毛ができてきている所見です。しかしこの現象は、毛穴が自ら再生しているのではありません。皮膚の深いところにある、毛乳頭にある細胞(毛乳頭細胞)の指示で、毛穴を作る細胞が増え、再生してくるのです。この毛乳頭細胞こそがIGF-1を作る細胞で、IGF-1は毛穴と毛を再生させる物質なのです。

毛乳頭細胞にIGF-1を作らせる刺激が、知覚神経刺激です。カプサイシンやイソフラボン、キングアガリクスなどの物質が、相乗的に知覚神経を刺激し、そこからCGRPという物質を放出させます。これが毛乳頭細胞に作用し、IGF-1を作らせるのです。こうして作られたIGF-1は、毛穴を作る細胞を再生させるのみならず、髪の毛の元になる毛母細胞も増やして、髪の毛を生やします。

写真2は、同じく汎発性脱毛の患者さんの頭皮です。同じく、IGF-1を増やす治療を続けてゆくと、毛穴が黒く目立ってきて、そして産毛が生えてくることがわかります。

▼写真2:44歳女性/汎発性脱毛症。上から治療前、治療1年4ヶ月後。

 

直接頭皮の知覚神経を刺激しても、毛穴と毛は再生する

サプリメント内服による治療は、体の内部から知覚神経を刺激し、毛穴を再生させます。また直接頭皮の知覚神経を刺激しても、毛乳頭細胞でIGF-1が作られ、毛穴が開き毛が生えてきます。

写真3は、頭部に全く毛がない、全頭脱毛の男の子の頭皮です。ある時に頭を蚊に刺されました。するとその1ヵ月後に、刺されたところで毛穴が黒く目立って再生し、産毛が生えているのが確認できます。蚊の唾液に含まれる成分は、皮膚の知覚神経を刺激し、かゆみを引き起こします。これが、毛根でIGF-1を増やして毛穴と毛を再生し、毛を生えさせる刺激になっているのです。

名古屋Kクリニックでは、カプサイシンの入ったジェルを薄毛部分に塗布して、毛穴を再生し、毛を生えさせる治療を行っています。

▼写真3:男児/全頭脱毛。左から蚊に刺された直後、蚊に刺されて1ヶ月後。

 

カプサイシンなどの知覚神経刺激が、眠っている毛根を目覚めさせる! 

これまで述べたように、薄毛の人の頭皮に毛穴が見えなくても、IGF-1を増やす治療を行えば、毛穴は開き、黒く目立ってきて、産毛が生えてきます。薄毛の人の毛根は、ちゃんと存在しており、ただ眠っている時間が長いので毛穴も閉じているのです。

カプサイシンやイソフラボン、キングアガリクスなどの知覚神経刺激が、眠っている毛根をたたき起こしてIGF-1を増やし、毛穴と毛を再生させます。

岡嶋 研二

育毛ドクター

名古屋Kクリニック院長。 IGF-1育毛理論の第一人者。

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