育毛物質「インスリン様成長因子-1」を増やすのは、成長ホルモンだけではなかった!

育毛物質「インスリン様成長因子-1(IGF-1)」を増やすと薄毛が改善されますが、IGF-1を増やす物質として、成長ホルモンが古くからよく知られています。

成長ホルモンは、脳下垂体から思春期をピークに分泌され、ヒトの心身の成長に欠かせない物質と言われています。

IGF-1を作れない病気の患者さんは、若年から薄毛になることも分かっています。だからと言って、薄毛の治療で成長ホルモンを注射することはできません。

成長ホルモンを作れない子供の患者さんへの、成長ホルモン補充は、心身の成長を正常にするという効果があります。しかし、健康で、ただ薄毛がある大人に成長ホルモンを注射すると、多くの副作用がみられます。

私は、育毛とは全く関係のない血液の研究中に、成長ホルモン以外のIGF-1を増やす物質を見出しました。しかも、それらの物質の投与は、成長ホルモン投与に見られる副作用を起こさずに、IGF-1を増やすことも分かりました。

それらの物質が、唐辛子の辛み成分であるカプサイシンと、大豆に含まれるイソフラボンなのです。そしてそれ以外にも、IGF-1を増やす作用を持つ物質が次々に見つかり、キングアガリクスに含まれるβ-グルカンも、その一つです。

 

カプサイシンとイソフラボンによる知覚神経刺激は、副交感神経の働きを介して、IGF-1を増やす

カプサイシンとイソフラボンを食べると、胃の知覚神経が刺激され、痛みを伝える神経経路を伝わって、脳の自律神経中枢へと伝達されます。

その結果、緊張時に働きが高まる交感神経と、リラックス時に必要な副交感神経が刺激されます。

すると、交感神経の刺激からは少量のアドレナリンが、副交感神経からはアセチルコリンが放出され、これらが頭皮などの末梢組織の知覚神経を刺激して、IGF-1を増やします。

その中でも特に、IGF-1の増加には、アセチルコリンが重要な役割を担います。

 

アセチルコリンの材料になるαGPCとは?

IGF-1には、脳の海馬という認知機能に関わる組織に働きかけ、認知機能を改善させる働きもあることが知られています。事実、マウスにカプサイシンを与えると、IGF-1が増え、認知機能も改善します。

前述の神経伝達物質であるアセチルコリンの材料になる物質として、「αグリセロホスホコリン(αGPC)」が知られています。すでにサプリメントとして市販されており、代表的な効能は、これも認知機能の改善です。

これらの事実は、αGPCが、IGF-1を増やして認知機能を改善する可能性を示しており、同時に、育毛効果を発揮しうることをも示しています。

 

カプサイシンとイソフラボンのサプリメントにαGPCを併用すると、育毛効果が増強!

実際に、αGPCを、カプサイシンやイソフラボンなどのサプリメントと併用してみると、育毛効果は高まるのでしょうか?

蛇行性脱毛という、重症の円形脱毛症の10代の男性患者さんは、カプサイシンとイソフラボン、さらにセファランチンという薬で、IGF-Iを増やす治療を開始しました。しかし、治療3ヵ月後でも、なかなか産毛が生えてきませんでした(写真1)。

そこで、αGPCを併用すると、徐々に産毛が生えてきて、6ヵ月後には、明らかな改善が見られました。αGPCを併用していなかった6ヵ月間と、併用した6ヵ月間を比較すれば、併用効果は明らかです。

▼写真1:10代男性/蛇行性脱毛。左から治療3ヵ月後(αGPC併用6ヵ月前)、治療9ヵ月後(αGPC併用直前)、治療15ヵ月後(αGPC併用6ヵ月後)。

他にも、治療で毛穴が黒くなっても、なかなか産毛が生えてこない患者さんたちにαGPCを併用すると、すぐに産毛が生えてくることが認められました。

 

αGPCの逆の作用(アセチルコリンの作用を阻害する作用)を持つ物質で、脱毛!

50代の男性型脱毛症の患者さんは、カプサイシンとイソフラボン、そして男性型脱毛症の治療薬であるアボルブによる  IGF-1を増やす治療を行いました。すると、治療前に比べて明らかに改善がみられました(写真2)。

ところが、順調に改善するはずである治療7年7ヶ月後に、前頭部で脱毛していることが分かりました(写真2)。

▼写真2:50代男性/男性型脱毛症。左から治療前、治療7年6ヵ月後、治療7年7ヵ月後。

サプリメントや薬の飲み忘れもなく、生活環境の変化もなかったことから、脱毛する薬を服用したと考え、薬の服用について細かく思い出してもらいました。すると、ある胃薬を1回服用したことを思い出されました(製薬会社へ副作用として報告済)。

この薬の成分を調べてみると、ロートエキスという成分が含まれており、この中には、アトロピンというアセチルコリンの作用を阻害する物質が入っていることが分かりました。アトロピンが、アセチルコリンの作用を阻害し、IGF-1を低下させて脱毛を引き起こしたと考えられます。

 

アトロピンそのものの使用にも注意!

アセチルコリンの作用を阻害するアトロピンは、検査や治療に使用されることがあります。眼科では、眼底検査時に瞳孔を開くために点眼され、外科手術では、麻酔の前投薬として注射で使用されることがあります。

アトロピン投与により、脱毛症でない人は、抜け毛が増える程度で済むと思われますが、薄毛のある人は、抜け毛が大量になるでしょう。

実際に、アトロピン様の成分を含む、ミドリンMという点眼薬を、仮性近視の治療で点眼して、円形脱毛症を発症した女児の患者さんもいます。

先日も、急性虫垂炎の手術をする、円形脱毛症治療中の女子の患者さんのお母様からの問い合わせで、麻酔前投薬のアトロピン使用を回避してもらい、脱毛を免れたことがありました。

まだ薄毛の改善が十分でないと感じられる方は、αGPCを併用してみても良いかもしれません。