これまでにお伝えしたように、女性ホルモンは、育毛物質であるインスリン様成長因子-1(IGF-1)を増やすので、女性の育毛に重要な役割を担います。

女性では、更年期が近くなると薄毛が気になってくるのも、女性ホルモンの分泌量が減り、 IGF-1が低下するためです。妊娠や出産でも女性ホルモンの産生が大きく変化するので、当然髪の毛の量や質に大きな影響が出てきます。

 

妊娠で、女性ホルモンは増加する。なぜ?

妊娠すると、受精卵が子宮に着床して、その後に胎盤が形成されます。

胎盤は、胎児の成長のための、栄養、呼吸、排泄に重要な役割を担っていますが、それ以外にも、妊娠を継続するために重要な、女性ホルモンなどのホルモンを分泌する働きを持っています。妊娠して女性ホルモンの産生が高まるのは、胎盤が形成されるからです。

 

胎盤は、女性ホルモン産生臓器

受精卵は、子宮に着床してすぐに、ヒト絨毛性ゴナドトロピン(hCG)というホルモンを作り始めます。 hCGは、その尿中での検出が、妊娠を知るための検査に利用されていることでも有名です。

hCGは、卵巣で、排卵後にできる黄体の働きを高めます。そして、妊娠しないと退縮してゆく黄体の生存期間を3~4ヵ月に伸ばし(妊娠黄体の形成)、女性ホルモンの産生を高めます。

女性ホルモンには、プロゲステロンとエストロゲンがあります。プロゲステロンは、妊娠の継続に必要で、胎児の栄養状態の改善や乳腺の発達の促進などの作用を発揮します。エストロゲンは、子宮の増大や乳腺を発達させる作用を持っています。

そして、妊娠黄体が退縮する、妊娠3 ~ 4ヵ月頃には、胎盤がホルモン産生臓器として機能するようになり、十分量のプロゲステロンやエストロゲンを作るようになります。

 

円形脱毛症の女性は、妊娠で改善し、流産や出産で脱毛

前述のように、妊娠し、特に5ヵ月以降になると、胎盤で女性ホルモンが産生されてくるので、IGF-1も増えて、育毛効果は高まってくると考えられます。

写真1の30代の女性は、汎発性脱毛という、全身の毛が抜けてしまう、円形脱毛症では最重症型の病気でした。治療前から、不妊治療を受けていたそうです。

▼写真1:30代女性/汎発性脱毛症

カプサイシンやイソフラボンを含むサプリメントとセファランチンで、IGF-1を増やす治療を開始すると、1年4ヵ月後から黒い産毛が増えてきました。

そして、1年6ヵ月後に、急に産毛が抜けました。この時、気が付かないうちに妊娠しており、流産をしたことが判明しました。妊娠の極めて初期なので、妊娠によるIGF-1の増加で産毛が増えたというより、IGF-1が増えて産毛が生えて、同時に、妊娠も成立していたと考えられます。

IGF-1には、卵巣機能を正常にする働きがあり、女性の性機能を改善します。その結果、無月経だった女性に生理が始まったり、生理不順が改善したり、妊娠しやすくなったりもします。

この患者さんは、さらに治療を続けると、治療2年後には、また産毛が生えてきました。そしてその1ヵ月後に、また妊娠が判明しました。そして、2年5ヵ月後の妊娠第17週という、胎盤が完成して女性ホルモンの産生が安定してくる時期には、著明な産毛の増加が見られました。

写真2の40代の女性は、多発型の円形脱毛症を発症しました。名古屋Kクリニックで、カプサイシンやイソフラボンを含むサプリメントとセファランチンで、IGF-1を増やす治療を2ヵ月間行いました。

▼写真2:40代女性/多発型円形脱毛症。左から治療前、治療2ヵ月後、治療1年1ヵ月後(出産4ヵ月後)。

すると産毛が生えてきましたが、この頃、妊娠したことが判明し、妊娠で脱毛症が改善することをお話しして、いったん治療を中止しました。すると治療中止後も、円形脱毛症は改善していきました。しかし、出産すると、4ヵ月後に円形脱毛症が再発しました。

この時の写真からは、円形脱毛症が再発していることが分かりますが、妊娠前に比べると、明らかに改善していることも分かります。

これらの症例の経過から分かるように、脱毛症は、妊娠で女性ホルモンが増えて、IGF-1が増加すると改善し、出産で女性ホルモンが急激に減少し、IGF-1も減少すると、また脱毛が起こります。円形脱毛症の症状はなくても、出産後に抜け毛が増えることは、多くの女性が経験するところです。

このように、IGF-1を増やす治療では、女性ホルモンの作用と同じ作用が発現すると考えられます。育毛効果と共に、性機能も改善して、妊娠しやすくなる可能性があります。そして、妊娠すると自然にIGF-1が増え、育毛効果が出てくることになります。  

 

単純な女性ホルモンの補充では、女性の薄毛は治らない!

出産では、急激な女性ホルモンの減少が起こるので、急に抜け毛が増えます。しかし、加齢に伴う卵巣機能の低下や、若年でもストレスによって女性ホルモンが減少すると、それに引き続くIGF-1の減少による薄毛が起こってきます。

このような状況で、単純に女性ホルモンを補っても、効果はあまり期待できないばかりか、血栓症や、更年期では乳がんのリスクを高めるなどの副作用が出てきます。

女性ホルモンそのものの投与のデメリットを考えると、女性ホルモンの健康効果を発現するIGF-1を増やすサプリメント(カプサイシンやイソフラボン、キングアガリクスなどを含む)が、出産後や更年期の薄毛に対する治療には有効だと考えられます。

妊娠計画中、妊娠中、授乳中のサプリメント利用については、医療機関へご相談ください