薄毛治療のために、カプサイシンやイソフラボン、キングアガリクスなどを含むサプリメントを服用している方の中で、サプリメントを飲み始めの頃に、抜け毛が増えたという方がいらっしゃると思います。

「なんで?このサプリメント、効かないじゃない。逆に悪くなっている!」と驚きと怒りが込み上げたかもしれません。しかし、ご心配はいりません。もし抜け毛が増えたなら、それは、すでに毛根が傷んで寿命の短くなった毛が、治療等により抜けて新しい毛に生え変わる「毛の生え変わり」が起こったからと考えられるのです。

 

毛の生え変わりは脱毛症の種類に関係なく起こる

毛の生え変わりは、このようなサプリメントを飲んだ人の全員に、脱毛症の種類と無関係に起こると考えられます。

しかし、毛根の傷んだ毛の数が少ないと、生え変わりも少ないので、気づかないことも多く(この場合、脱毛症は軽症)、逆に、毛根の傷んだ毛の数が多いと(すなわち重症の場合)、多くの毛が生え変わるので、はっきりと抜け毛が増えたことに気づきます。

私のクリニックの患者さんでは、ほとんどの場合、毛の生え変わりは治療開始後1ヶ月以内に起こり、終了します。

しかし、重症の円形脱毛症や、特にその中でも、脱毛する薬(風邪薬や抗アレルギー薬など)を飲んだ人では、毛の生え変わりが、数ヶ月、または数年に及び、特に後者の場合では、毛が抜けた後、なかなか生えてこない場合もあります。

薄毛の悩みのある人は、絶対に風邪薬や抗アレルギー剤を飲まないようにしましょう(脱毛する薬の種類に関しては、拙著『薬害脱毛(現代書林刊)』をお読み下さい)。

 

毛の生え変わりの実例

写真1は、51歳の女性型脱毛症の患者さんの頭部です。治療2ヶ月後には、治療前に比べて、頭頂部の地肌がより目立っていることがわかります。

しかし治療3ヶ月後には、治療2ヶ月後より地肌が目立たなくなり、治療前よりも改善しています。これは、治療2ヶ月後には抜け毛が増えましたが、治療3ヶ月後には、治療前よりも頭頂部の薄毛部分の毛が太くなったために、外見上の改善が見られたのです。

毛が太くなったということは、頭皮の状態が良くなったことを意味しますので、これ以降、産毛が生え、今後は毛が増えることによる改善が見られるでしょう。 

▼写真1: 51歳女性/女性型脱毛症。左から治療前、治療2ヶ月後、治療3ヶ月後。

写真2は、33歳の男性型脱毛症の患者さんの頭部です。治療1ヶ月後には、治療前よりも、頭頂部の毛が減っており、地肌の見える範囲が広がっています。しかし、治療5ヶ月後には、頭頂部の地肌の見える範囲が狭くなり、また、その部分の毛も太くなり、改善していることがわかります。

これも、治療1ヶ月後に毛の生え変わりが起きて、その後、産毛が増え、毛が太くなり、治療5ヶ月後には明らかに改善してきたことを示しています。

▼写真2:33歳男性/男性型脱毛症。左から治療前、治療1ヶ月後、治療5ヶ月後。

写真3は、円形脱毛症の15歳女性の頭部です。円形脱毛症では、大量の毛の生え変わりが起きることが多く、最重症の場合には、全身の毛が抜けて、生え変わりが起きることもあります。

この患者さんの場合には、治療1ヶ月で脱毛して、前頭部の地肌の見える範囲が広がっていますが、治療2ヶ月では、すでに産毛が増えて、改善していることがわかります。

女性型脱毛症や男性型脱毛症は、ゆっくりと起こってくる慢性疾患であるのに対して、円形脱毛症は、急激に起こってくる急性疾患ですので、頭皮の状態が良く保たれていると、速やかに改善してきます(ただし、一般の皮膚科治療では治らないこともあります)。

▼写真3: 15歳女性/多発性円形脱毛症。左から治療前、治療1ヶ月後、治療2ヶ月後。

 

毛の生え変わりはなぜ起こる

カプサイシンやイソフラボンなどのサプリメントを服用すると、インスリン様成長因子-1(IGF-1)という育毛効果を持った物質が、体内で増えていきます。

また、髪の毛の寿命は3~6年で、次の3つの期間に分類できます。

①成長期(2~6年)。髪の毛が伸びる期間で、頭髪の約90%がこの時期に当たる。②退行期(2~3週間)。成長が止まる期間で、頭髪の約3%に当たる。③休止期(約100日)。髪の毛を作る装置である毛乳頭が、今生えている髪の毛の根元から離れて行く。頭髪の約10~15%に当たる。

休止期から成長期に移る間、すなわち、新しい毛が作られ始める時期になると、古い毛が抜けていきます。

IGF-1は、髪の毛の成長期を延長し、退行期や休止期を短縮させることで、髪の毛を増やします。また、IGF-1は、髪の毛のコシや太さ、ツヤを改善する作用、すなわち髪の毛の質を良くする作用も持っています。

脱毛症では、その種類によりメカニズムは異なりますが、毛根のIGF-1が減少するので、髪の毛の成長期が短縮し、休止期や退行期が長くなり、毛が抜けやすく、生えにくくなっています。また、髪の毛が細く、ツヤやコシも悪くなります。

薄毛の人の頭髪では、まだ成長期にあるもの(まだ毛根が傷んでいないもの)については、IGF-1は、さらにそれらを成長させます。

しかし、退行期や休止期にあるもの(毛根が傷んで寿命が短くなっているもの)については、それらの期間を短縮させます。その結果、これらの毛は早く抜けてしまい、同時に、次の新しい産毛ができ始めることになります。このような仕組みで、毛の生え変わりが起こります。

 

本当に病気が治るときには、一過性に、病気と同じ症状が出る

漢方治療では、症状だけを取る西洋医学の対症療法とは逆に、病気が治る前に、一過性に病気と同じ症状が強くなることがあることがあります。IGF-1を増やす脱毛症治療で、一過性に抜け毛が増えるのも、これに相当し、まさに、脱毛症が治る前触れと考えられるでしょう。