断食は、なぜ勧められる?

断食が健康維持に良いことは広く知られています。では、なぜ断食でそのような効果が現れるのでしょうか?

太古の昔、ヒトは長期間、飢餓状態の中で暮らしていました。そしてその後に、常時食べ物のある環境で暮らし始めました。

すなわち、ヒトは200万年間もの狩猟生活をしており、その間、飢餓状態を度々経験していましたが、その後に農業が行われるようになり、常時食物を得られるようになったのです。しかし、農業が始められてからは、まだ12000年しか経っていません。

このように、飢餓状態で暮らした時間に比べると、食糧が常にある環境で暮らした時間は極めて短いのです。このことは、ヒトが後者の状態にはまだうまく適応していないことを示唆しています。

このような、食物が常にある環境への不適応が、ヒトに色々な病気を起こしている、とする考えが、断食を勧める背景にあります。断食により、本来適応していた環境にヒトの体を戻してやれば、色々な病気が改善するであろうと考えられているのです。

 

断食の効果とは

断食の健康効果には、どのようなものがあるのでしょうか?

これまでに分かっているヒトでの断食の効果は、下記のものなどが知られています。メタボの患者さんでは、肥満や糖尿病、高血圧の改善。ガンの患者さんでは、化学療法に伴う全身倦怠感や消化器症状の改善、さらに血小板や赤血球の減少の抑制。てんかんの患者さんでは、発作の程度の軽減などがあります。

これらの効果は、体内物質である「インスリン様成長因子-1(IGF-1)」の効果で説明できます。

IGF-1は、インスリンの効き目を上げ、血管を拡張することで、糖尿病や高血圧を改善します。またIGF-1は、胃腸の働きを良くし、 免疫力も上げ、造血も促進するので、抗がん剤による食欲不振や貧血、さらに血小板減少をも改善します。そしてIGF-1の鎮静効果により、てんかんの発作も軽減されると考えられます。

IGF-1には、育毛効果や美肌効果もあるので、もし断食の効果にIGF-1が重要に関わっていれば、断食により育毛・美肌効果も現れると考えられます。

 

断食IGF-1は増える;そのメカニズム

断食をすれば、体内で色々な物質代謝の変化が起こりますが、これらは、断食によって食物が入ってこなくなったことを代償する体の反応です。これらの中の、体の機能を維持する重要な物質であるIGF-1を増やす反応は、「グレリン」と「ケトン体」という物質の増加によってもたらされます。

 

グレリンとは

グレリンは、ヒトに物を食べる行為、いわゆる摂食行動を引き起こす物質として知られています。

グレリンは胃で作られますが、カプサイシンと同じように、知覚神経を刺激しIGF-1を増やす作用があることが私の研究で分かりました。絶食により増えるグレリンは、まず胃のIGF-1を増やすことで、胃の調子を良くします。

グレリンをマウスに投与すると、マウスの全身の組織でIGF-1が増えます。海馬という脳の組織は、学習と記憶の中枢です。グレリンを投与したマウスでは、その海馬でもIGF-1が増えて、海馬の神経細胞の働きや再生能力が高まり、結果、マウスの学習能力が高まることが分かりました。

このことは、体の記憶力と学習能力を高めて、食べ物のある場所を思い出させ、どのようにして食べ物を獲得するかという思考能力を高める、という意義を持っているのです。もちろん、IGF-1が高くなるので、髪の毛も肌もきれいになります。

 

ケトン体とは

通常、ヒトは摂取した糖質(ブドウ糖)をインスリンの作用で細胞内に取り込ませ、エネルギー源として利用します。しかし、インスリンの作用不足で起こる糖尿病の重症化、または絶食による糖質制限の場合などでは、糖質がエネルギー源とならなくなり、その代わりに脂肪がエネルギー源として利用されます。

この時に、脂肪が分解されて、ケトン体という物質ができてきます。このケトン体が知覚神経を刺激してIGF-1を増やすので、断食に伴う糖質制限では、育毛・美肌などのIGF-1の健康効果が表れてきます。

この現象を利用した食事療法が、老化や認知機能低下の防止に良いとされて一時的にブームにもなりました。それは、エネルギーとして利用されやすい中鎖脂肪酸を多く含む、ココナッツオイルを摂取するという食事療法です。

ケトン体を生成しやすい食事を、「ケトン食」と言います。もちろん、ココナッツオイルもケトン食の一つで、IGF-1を増やして、その効果を発揮すると考えられます。

前述のように、断食の効果で、てんかんの発作を軽減するというものがありますが、ケトン食療法という治療が、すでにその治療に応用されており、これもIGF-1の効果によるものと考えられます。

 

どうやって断食する?

これまでに、最短12時間の断食でその効果が出ることが知られています。

したがって、毎日プチ断食をするならば、朝7時に朝食を取り、昼食を抜いて、夜7時に夕食を取るという1日2食にすれば、12時間の断食ができることになります。また、夜7時から翌朝7時までも12時間の断食になります。この間、糖質を含まない水分を喉が乾かないように飲むことも重要です。

また、昼食を抜くために、朝食に腹持ちのよい玄米を食べることが勧められます。玄米の胚芽成分が知覚神経を刺激してIGF-1を増やしますが、胃腸の知覚神経を刺激すれば満腹感も持続します。

ですので、玄米などのIGF-1を増やす食材を朝食に取り、カプサイシンやイソフラボン、β-グルカンなどの知覚神経を刺激してIGF-1を増やすサプリメントを朝食後に取れば、昼食時に空腹感を感じることは少なくなるでしょう。

昼食を抜くデメリットは、唾液の分泌が少なくなることが挙げられます。唾液には、IGF-1そのものが含まれているほか、シアル酸などの、やはりIGF-1を増やす成分があるので、昼食時には、糖質を含まないガムを噛んで、唾液の分泌を高めるのが良いでしょう。

よく、朝食を抜くと健康になるという人がいますが、朝食をしっかり食べることは、自律神経のリズムを整え、夜間の睡眠を深くする効果もあるため、朝食抜きの断食は勧められません。

以上のように、断食効果もIGF-1理論にかなったものです。健康効果と共に、美髪・美肌のためにも、プチ断食をお勧めします。