女性ホルモンの働きが悪くなりIGF-1が低下して、薄毛や更年期障害が起こる

以前このコラムで書いたように、女性の薄毛は、女性ホルモンの働きが悪くなって起こってくると考えられます。これは女性ホルモンが、カプサイシンやβ-グルカンと同じように、知覚神経を刺激して、育毛効果を持つインスリン様成長因子-1IGF-1)を増やすからです。

加齢による卵巣機能の低下に加えて、若年女性でも、ストレスや生活習慣の乱れから、脳下垂体からの卵巣を刺激するホルモンの分泌低下や、分泌のリズムが悪くなることなどにより、女性ホルモンの分泌が低下します。これらの結果、IGF-1が減少して、抜け毛の他、髪の毛が細くなったり、コシがなくなったりします。

IGF-1は、育毛効果の他に様々な健康効果を持っており、女性の健康維持には欠かせない物質です。従って、女性ホルモンが減少してIGF-1が低下すれば、薄毛と共に色々な症状が発現し、いわゆる更年期障害が起こります。

 

卵巣で女性ホルモンが作られなくなると脂肪組織で女性ホルモンが作られる

加齢によって、卵巣での女性ホルモンの生成が低下すると、IGF-1が減少し、髪の毛や肌も含めて女性の心身の不調が起こってきます。このような状態を改善するため、女性の体は、生存への適応反応として、脂肪組織で女性ホルモンを作るようになります。

この反応では、脂肪組織で「アロマターゼ」という酵素が誘導されてきます。そしてこの酵素が、女性の体内の男性ホルモンを材料にして、女性ホルモンを作るのです。

女性が年を重ねるごとに脂肪が増えるのは、このような目的を持った適応反応のためであり、少しぽっちゃりしている女性の方が肌が綺麗であるのは、このためです。この反応は、言い換えれば、更年期障害軽減する反応と考えられます。

 

脂肪組織で作られる女性ホルモンは、閉経期以降の乳がん発症のリスクを上げる

脂肪組織で女性ホルモンが作られることは、更年期障害を軽減するからと、ダイエットをあまり厳しくせず、脂肪を少し増やした方がアンチエイジングには良い、と考えるのは早計です。

脂肪組織での女性ホルモン産生は、一方では、乳がんのリスクを高めることにもなります。乳がん細胞には、女性ホルモンによって増殖するものもあります。

肥満が女性の乳がんのリスクファクターのひとつとなっていますが、これは脂肪組織で作られる女性ホルモンが、女性ホルモン感受性の高い乳がん細胞が発生した際に、その増殖を促進するためです。そのために、閉経後の乳がん治療には、アロマターゼ阻害剤が使用されます。

 

アロマターゼ阻害剤では、強い更年期障害の症状が発現する

前述のように、閉経以降の乳がんの治療には、アロマターゼ阻害薬が使用されますが、この薬の服用では、脱毛をはじめ、ほてり、頭痛、関節痛、めまい、眠気、吐き気、嘔吐、発疹、かゆみ、多汗、コレステロール上昇、骨粗鬆症、および骨折などの強い更年期障害の症状と同じ副作用が出ることが報告されています。

この事実は、閉経以降の脂肪組織での女性ホルモン産生が、更年期障害の症状を軽減していることを示しています。

 

脂肪組織の女性ホルモン合成阻害による脱毛が、IGF-1を増やすサプリメントで改善

ある60代の女性は、乳がん治療のため、アロマターゼの働きを阻害する、女性ホルモン生成阻害剤(フェマーラ)を服用しました。その結果、脱毛が見られ、前頭部を中心に薄毛になってきました。

皮膚科や街中の育毛クリニックで、女性の薄毛治療に使うのは、副作用が多く、体毛が増えるが頭髪は増えにくいというミノキシジルしかありません。東北地方にお住まいのこの女性は治療できずに困って、著者のクリニックに来院されました。

カプサイシン、イソフラボン、タキシフォリン、さらにβ–グルカンを含むチャガでIGF-1を増やす治療を開始すると、治療後4ヶ月、7ヶ月と、治療前に見られた前頭部の薄毛が改善されてきました(写真参照)。

▼写真:60代女性/乳がん治療薬剤による脱毛。上から治療前、治療4ヵ月後、治療7ヵ月後。

この事実は、やはり女性ホルモンがIGF-1を増やして育毛効果を発揮していること、さらに女性型脱毛症は、女性ホルモンの働きが悪くなり、IGF-1が減って起こってくることを示しています。さらに、IGF-1を増やすことが、薄毛を含め、様々な更年期障害の症状も改善させると考えられます。

 

IGF-1を増やすサプリメントは、乳がん発症のリスクを下げる

これまで述べたように、加齢による卵巣の女性ホルモン産生低下によるIGF-1減少を補うために、脂肪組織で、女性ホルモンを合成するアロマターゼという酵素が増えてきます。

しかし、知覚神経を刺激してIGF-1を増やしてやれ、アロマターゼの増加の必要は無くなります。事実IGF-1は、アロマターゼの増加を抑制する作用を持っていることが判明しています

著者がウイーン大学医学部に留学中、そこでの指導教授から「白人に比べ、日本人の女性に乳がん患者が少ないのは、毎日、味噌汁を飲むからだ」と教えられました。当時は理由が分からなかったのですが、今考えると、味噌汁を飲み、大豆イソフラボンを日常的に摂取することが、IGF-1増やして、アロマターゼの誘導を抑制するので、乳がんのリスクが下がるからなのでしょう。

シャーレの中の実験で、イソフラボンは、女性ホルモンの受容体と弱く結合する作用があることがわかっているので、イソフラボンが、乳がんの増殖に関与するなどと言う人がいます

シャーレの中の実験結果は、それだけの意味しかないので、それで体全体の現象を推論してはいけません。シャーレの中の実験結果は、生体における現象を説明するための補足的な意味しか持っていないので、臨床の事実を無視してシャーレの中の実験結果が1人歩きすると、間違った方向へ医学研究を進めてしまいます。

イソフラボンが、女性ホルモン様作用を発揮して乳がんの発症リスクを上げるなどということは、ただの噂ですのでご安心下さい。