ストレスで毛が抜けるのは事実

ストレスで髪の毛が抜けるのは事実です。ストレスを受けると、薄毛でない人は抜け毛が増える程度で済むのですが、男性型脱毛症や女性型脱毛症の人では薄毛が悪化します。円形脱毛症の体質を持つ人では、ストレスによって円形脱毛症が起こったり、悪化したり、再発したりします。

これまでに私のクリニックで経験した円形脱毛症の発症原因となったストレスは、大人の場合、最も多いのは、なんと結婚です(男性の方が、女性より多い!)。そして婚約の破談(これも男性)、引っ越し、仕事上のストレス(多忙、上司の変更など)、近親者の死などがあります。

これらのストレスの場合、以前からあった頭痛がひどくなったり、花粉症が悪化したり、目が疲れたりなどの症状を伴うことが多く、痛み止めやかゆみ止め入りの目薬などが使用されています。これも脱毛に関係しています。

また子供の場合は、入園、入学、引っ越し、下に子供が生まれた、そしていじめなどのストレスで、円形脱毛症が起こっています。

下の写真は、円形脱毛症の最重症型で、全身の毛が抜けてしまう汎発性脱毛の30代男性患者の頭部です。全く毛がない状態から、IGF-1を増やす治療により産毛が生えてきたのですが、婚約が破談になり、その2ヵ月後に毛が抜けてしまいました。

▼写真:30代男性/汎発性脱毛。左からストレス直前、 ストレス2ヶ月後。

男性型脱毛症や女性型脱毛症では、ストレスによる悪化は徐々に回復しますが、時間がかかります。また円形脱毛症は、既存の皮膚科治療では治らないので、ストレスによって起こった脱毛症を一生抱えていくことになりかねません。この様な意味では、薄毛にならないためにも、また薄毛を悪化させないためにも、ストレスに強くなる生活習慣を送ることが重要になってきます。

 

ストレスによる脱毛の原因は、自律神経の失調

ストレスは、どうして脱毛や病気を引き起こすのでしょうか?

体は、いろいろな臓器の働きを正常に保つ仕組みを持っています。これを生体の恒常性を保つ仕組み=ホメオスタシスと言います。ホメオスタシスでは、ホルモン分泌系、神経系、そして免疫系が、環境の変化に応じて協調して作動し、体の働きを正常範囲内に保ちます。しかし環境の大きな変化(大きなストレス)は、ホメオスタシスを破綻させて、脱毛や病気を引き起こします。

ホメオスタシスの破綻は、自律神経のアンバランスを引き起こし、緊張状態の神経である交感神経の作用が、リラックス神経である副交感神経の作用を上回ることとなります。結果として育毛効果や健康維持効果を持つインスリン様成長因子-1(IGF-1)が減少し、これにより脱毛や病気が引き起こされるのです。

このような自律神経の失調は、どの様にしてIGF-1を減少させるのでしょうか?

 

自律神経が乱れると、毛を生やす「刺激」が伝達されなくなる

前述のように、IGF-1が増えれば毛が生えるので、ストレスで毛が抜ける時は、IGF-1が減っていることになります。知覚神経を刺激すると、IGF-1はまず刺激された組織で増えますが、刺激が強いと、その刺激は刺激局所に留まらず、全身の組織に伝達され離れた組織でもIGF-1が増えます。この刺激伝達経路は、刺激部位から脳の自律神経中枢までは、熱さ、痛み、かゆみを感じる知覚神経で、自律神経中枢から末梢の組織までは、副交感神経なのです。

つまり大きなストレスによって、交感神経の作用が強くなり副交感神経の働きが弱まると、脳からの刺激が末梢の組織に伝わりにくくなり、これらの組織でIGF-1が減少します。頭皮でもIGF-1が減少するので、抜け毛が増えたり、円形脱毛症が発症したりするのです。

 

ストレスによる脱毛を防ぐには、ストレスに強くなるしかない

これまで述べたように、ストレスが強いと自律神経の働きがアンバランスとなり(自律神経失調)、結果としてIGF-1が減少します。ストレスは避けようがないので、結局、自律神経の安定性を高めるような生活習慣を送ることが、ストレスによる抜け毛を防ぐために重要になります。

自律神経の安定性を高めて、そのバランスを良くするためには、ずばり、知覚神経を刺激することが、ひいては副交感神経の働きを強めることになり、最も重要です。

 

プチストレスで、ストレスに強くなろう!

ストレスというと、すべて抜け毛や病気の原因になるという、悪いイメージが先行します。しかしストレスがあるからこそ、ヒトは生きていけるのです。

ストレス時には交感神経優位になり、組織の血管が収縮して、血流動態が不安定になります。このような場合、組織の知覚神経は刺激されやすくなります。すなわち体はストレスがかかると、それに打ち勝とうとして知覚神経を敏感にし、副交感神経を作動させようとするのです。そしてこの機構がうまく作動してIGF-1を増やすことができると、ストレスに打ち勝ったことになり、抜け毛や病気は起こりません。

ストレスを受けることで起こってくるこのような現象を通して、ヒトの体はストレスに強くなっていくのです。これはヒトの進化にも重要な過程で、ストレスを受けることでそれを克服する力が強くなり、ヒトが生き延びることができるようになるのです(進化)。しかしストレスを克服できなかったヒトは淘汰されることになります。

すなわち知覚神経刺激は、ヒトの体のストレス耐用性を高めるプチストレスと言えます。毎日、何気なく知覚神経を刺激するサプリメントを摂取することは、実は自律神経の安定性を高めるプチストレスなのです。

ストレスを克服するには、食生活では、唐辛子、大豆、ニンニク、ショウガ、および発酵食品などの知覚神経を刺激する食材を多めに食べること、さらに知覚神経が刺激されやすいように体温を上げること(前回述べた運動や筋トレ、さらに入浴は湯船につかるようにする)、十分な睡眠をとる、さらに1日の自律神経のリズムを整えるために朝食を摂る、などが重要です。

またカプサイシン、イソフラボン、そしてアガリクスなど、知覚神経を刺激する成分を含んだサプリメントを摂取することも、自律神経の安定につながります。