両親が共に、また、どちらかが薄毛であると、自分にも薄毛が遺伝しないかと心配になるでしょう。

薄毛にも、遺伝するものとしないものがあります。結論から言うと、男性型脱毛症と円形脱毛症は遺伝しますが、女性型脱毛症が遺伝することは、現在のところ判明していません。

 

一般的に病気は、遺伝と環境によって起こりやすさが決まる。それは薄毛も同じ。

一般に病気は、遺伝と環境によって、その起こりやすさが決まります。したがって、薄毛を含む病気の予防には、それぞれの病気における遺伝と環境の関与を知ることが必要です。

その上で、遺伝がより重要な関与をする病気では、早期発見・早期治療を心がけることが重要になり、反対に、環境がより重要な関与をする病気では、普段から病気を予防する生活習慣を心がけることが重要になります。

癌、感染症、そして心臓病では、遺伝と環境のどちらがより重要であるかが、わかっています。癌は、遺伝するものもありますが、一般に環境の方が関与することが報告されています。感染症では、環境より遺伝の方が、心臓病では、遺伝と環境の両方が、同じ程度に重要であることが報告されています。

すなわち、癌は、まず生活習慣に気を付け、感染症は、早期発見・早期治療を心がけ、心臓病は、生活習慣に気を付けながら、同時に早期発見・早期治療を心がけることが、その発症予防に重要ということになります。

 

男性型脱毛症は遺伝する

日本では、成人男性の3人に1人が男性型脱毛症だと言われていますが、この原因は母親の染色体を介して遺伝します。 これを説明するために、髪の発育の仕組みと男性型脱毛症の発症原因を復習しましょう。

毛根の知覚神経が刺激されると、毛乳頭細胞という細胞からインスリン様成長因子-1(IGF-1)が産生され、毛の元になる毛母細胞が増えて、髪が発育します。

男性型脱毛症が発症するのは、男性ホルモンが変化したDHTという脱毛ホルモンが、知覚神経の男性ホルモン受容体に作用して、知覚神経機能を低下させ、結果としてインスリン様成長因子-1(IGF-1)が減少するためです。

この男性ホルモン受容体の、脱毛ホルモンに対する感受性が遺伝します。すなわち、脱毛ホルモンに対する、この受容体の感受性が高いと、男性型脱毛症が起こります。

この受容体の感受性は、母親(XX)のX染色体を介して遺伝します。母親のX染色体の一つは、その父親から遺伝してきます。すなわち、母親の父親(XY)が男性型脱毛症であれば、そのX染色体が母親に行き、その男の子(XY)に伝わります。

男の子にとっては、母方の祖父が男性型脱毛症であれば、男性型脱毛症になりやすいということです。男の子の父親が薄毛でも、男性型脱毛症は遺伝しません。

男性型脱毛症は中年以降に起こると考えがちですが、母方の祖父が薄毛である場合、男性では10代の若い時期から薄毛がみられます。

写真1は、19歳ですでに頭頂部に薄毛が見られた男性の頭部です。IGF-1を増やす治療3ヵ月で、すでに改善していることがわかります。男性型脱毛症は、主に遺伝によっておこるので、治療を中止すると、また元に戻ります。

▼写真1:19歳男性/男性型脱毛症。左から治療前、治療3ヶ月後。

 

女性型脱毛症では、遺伝は知られていない

女性型脱毛症では、その発症に女性ホルモンの産生低下が関与しています。更年期では、卵巣の一次的な機能の低下から、そして若年女性では、卵巣を刺激する脳下垂体からのホルモンの分泌異常による卵巣の二次的な機能低下から、女性ホルモンの分泌低下が起こり、薄毛になります。

いずれも、これらの女性ホルモンの分泌低下に、遺伝が関与していることは知られていません。

若年性の女性型脱毛症の発症にはストレスを含む環境因子が、更年期の女性型脱毛症には、環境というよりは老化が関与しています。

前者の予防には生活習慣の見直しが必要ですが、後者の予防は不可能なので、適切なIGF-1を増やす治療を開始する必要があります。言い換えれば、IGF-1を増やす治療は老化防止にもなるということです。

写真2は、24歳女性の薄毛写真です。IGF-1を増やす治療をある程度の期間行えば、このように改善します。写真3は、53歳の女性型脱毛症の患者さんの写真です。生え際が薄いことで来院されましたが、IGF-1を増やす治療2ヵ月で、産毛が太くなっていることが分かります。

▼写真2:24歳女性/女性型脱毛症。左から治療前、治療1年6ヶ月後。

▼写真3:53歳女性/女性型脱毛症。左から治療前、治療2ヶ月後。

このように、女性型脱毛症は遺伝ではなく環境によって起こるので、サプリメントの摂取などの食習慣を含めた、生活習慣の改善がその予防や改善に重要です。

 

円形脱毛症は、遺伝するものも多い

円形脱毛症では、遺伝するものが多いことが知られています。この脱毛症は、本来免疫反応に関わる自分のリンパ球が、自分の毛根を攻撃して起きる、いわゆる自己免疫疾患です。

円形脱毛症では、患者さんの10~20%に、家族内に発症した人がいることがあり、遺伝が明らかに関与するものがあります。また、円形脱毛症の患者さんでは、円形脱毛症以外の自己免疫疾患(例えば、甲状腺の病気である橋本病など)と合併したり、家族内にも、円形脱毛症以外の自己免疫疾患を発症した例もあります。

名古屋Kクリニックでも、親子で治療した例が1例、兄弟で治療した例が3例あります。円形脱毛症は女性型脱毛症と同じく、通常の皮膚科での治療が全く無効なので、その重症化を防ぐには早期発見・早期治療が重要ですが、IGF-1を増やす治療を早期に始めることが重要になります。