薄毛は、毎日鏡に向かうと見えるだけに、つらい思いをさせます。

このような外見上の問題に加えて、髪は「餘(血の余り)」と言われるように、その状態は体の内部の状態の反映でもあるので、薄毛は健康状態があまり良くないことをも意味します。

したがって、髪の毛の質を良くしようとする、また、それを増やす試みは、外見を良くするだけの問題ではなく、健康状態をも良くすることになります。

これまでご紹介してきたように、インスリン様成長因子-1(IGF-1)という物質は、育毛、美肌、そして健康状態を維持する上で、重要な物質です。

したがって、薄毛を改善するために、食生活を含めた、IGF-1を増やす生活習慣を実行することは、外見のみならず体の内部の状態を改善することになります。

そして、これらの試みに加えて更に重要なのが、気持ちの持ち方なのです。

 

「生えてくる」と期待する気持ちで、実際に薄毛が改善!

気持ちを前向きにするだけで、薄毛が改善した実例をご紹介します。カプサイシンとイソフラボンの育毛効果を確認するために、私は、薄毛の人たち48人にこれらのサプリメントを5カ月間飲んでもらい、その効果を検証しました。

同時に、治療することの心理的効果が育毛にどれくらい影響するかを見るために、そのうちの17人には、カプサイシンやイソフラボンの入っていない、偽のサプリメント(プラセボといいます)を飲んでもらいました。

そうすると、5ヵ月後には、本物のサプリメントを飲んだ31人のうち20人に育毛効果が見られましたが、偽物のサプリメントを飲んだ17人のうち2人にも、育毛効果が見られたのです。

次に、そのうちの1人の頭部の写真を示します。40代の女性型脱毛症の方ですが、明らかに頭頂部の薄毛が改善しているのがわかります。

▼40代女性、女性型脱毛症。左は開始前、右はプラセボ服用5ヶ月後。

このサプリメントの育毛効果を確かめる試みを始めるにあたって、全員の方に、カプサイシンを服用すると、胃が熱くなったりするので、空腹時には飲まないようにと話しておきました。

この女性は、プラセボを飲んでいるにも関わらず、3カ月目には、胃が熱くなると言っていました。完全に、カプサイシンとイソフラボンを飲んでいると思い込んでいるようでした。

 

プラセボ効果とノセボ効果

前述のように、偽薬が治療効果を表すことをプラセボ効果といいます。プラセボとは、自分を喜ばすという意味です。

効能のある成分が入っていなくても、その薬を飲むと病気が良くなると期待して、気持ちが前向きになることで、実際に病気が治る効果です。

ヒトは、治る力(治癒力)を持っているので、気持ちが明るくなることで、治癒力が十分に引き出されるのでしょう。

私のクリニックの患者さんでも、脱毛症が治っていくときに、毛が生えた部分を見て、「ここにも毛が生えている。ありがとうございます。」と言う患者さんと、同じように毛が生えていても、まだ生えていない部分を指さして、「でも、ここには、まだ生えていない」という患者さんがいます。

ヒトによって治療効果に対する反応は違うのですが、結局、治療をきちんと続けて治るのは、もちろん前者の患者さんです。

プラセボ効果の逆の現象を、ノセボ効果と言います。これは、この薬は全く効かないなどと言われたり、自分でそのように信じてしまうと、理論的に効果のある薬でも、効果がでないばかりか、逆に病気を悪くしてしまう現象のことです。ノセボとは、「自分に害を与える」という意味です。

治療により効果が出ると、それを喜んでお礼まで言ってくれる患者さんには、まさにプラセボ効果が、同じ治療効果でも、まだ不満を持つ患者さんでは、ノセボ効果が表れるであろうことは想像できます。

 

プラセボ効果は、薬の効果を決めるうえで重要!

胃酸は、胃潰瘍の増悪因子の一つです。したがって、胃潰瘍がある人の胃酸分泌を抑えれば、胃潰瘍は改善します。以前、胃酸分泌を強力に抑える薬の臨床治験が行われました。

この薬の服用1ヵ月の治療効果は、平均して70~75%でした。そして、偽薬の治療効果は平均で33%でした。

しかし、偽薬の治療効果は治験ごとに大きくばらつき、なんと10~90%に及んだのです。これは、本当の薬よりも高い治療効果がみられた臨床治験もあったということになります。

つまり、薬の治療効果は、その薬の作用よりも、プラセボ効果によるところが大きい場合があるのです。

胃潰瘍の本態は、胃粘膜の炎症で、これは体の自律神経のバランスに密接に関連しており、そのバランスの悪さにより炎症が増悪します。

プラセボ効果を引き出すのは、自律神経のうちでも、リラックス神経である副交感神経優位の状態で、ノセボ効果を引き起こすのは、怒りなどで緊張する交感神経優位の状態です。

気持ちの持ち様で、どちらの神経が優位になるかが決まり、薬の治療効果が決まるのは、このためです。

 

副交感神経優位が、IGF-1を増やす

カプサイシンやイソフラボンを服用して胃の知覚神経が刺激されると、その刺激情報は、脳の自律神経中枢を経て、交感神経と副交感神経を緊張させます。

そして、副交感神経の働きが優位になるとIGF-1が増え、薄毛を含めて病気を改善します。

 

気持ちを前向きに、そして小さな変化でも大切に

女性型脱毛症は若年でも起こることはありますが、やはり、女性ホルモンが減ってくる更年期に近くなると起こりやすくなります。

IGF-1を増やす治療でも、ゆっくりと改善してくる場合もあるので、髪の毛の量が急に増えなかったとしても、髪の毛のコシやツヤが良くなるなどの小さな変化を今後の大きな改善の兆しと考え、IGF-1を増やす生活習慣やサプリメントを続けることが重要です。

まさに、「病は気から」ですが、「治るも気から」です。